日本看護研究学会雑誌発行50周年記念誌
19/114

Japanese Society of Nursing Research 9法人化に伴う「公益性」の価値判断についての意思決定に悩む中,本学会にとっては選択 (3)「法人化」に必要な法律上の検討課題と法律の改正 本学会が「法人化」する場合の,選択可能な法人の種類た。当時の公益法人制度における「法人化」の条件を満たの資産」「事務局体制」が主なものではあるが,制度とし可主義」とされていたように,「法人の設立」のためにはたその「公益性の判断」についても同主務官庁が判断でと「公益性の判断」は「一体」として⾏われていた。すなわその学会事業が公益性をもったものであることを,主務官ば,公益法人を名乗ることができない仕組みであった。当ことから公益法人の設立は容易ではなく,先⾏して法人会においても許可された学会は見られなかった。本学会も達し,「法人化」は最優先の目標ではあったが,その達成併なども視野に⼊れた「看護学」としての公益性の主張の検討段階において,資産や事務局体制の整備など,物理的一方では,「公益法人」という組織変⾰が,それまでに学妨げるものにはならないのかといった,学会としての立られていたように思われる。 の幅が広がる新法律公布の情報がもたらされた。2006 年 ⾏された「公益法人制度改⾰関連三法」である。この法律務官庁制・許可主義」が廃止され,「法人の設立」と「公なった。すなわち,「法人の設立」は登記のみで可能にな明確な基準に従って,希望する法人のみに対して⾏政庁がついては,総務省および公益法人協会の HP 等を参照してこのことは,本学会にとって「法人化」を実現する,まこの情報は,当時,私が「看護学研連」委員として関わっ本看護系学会協議会の活動の中で,いち早くもたらされ,The 50th Anniversary   (3)「法人化」に必要な法律上の検討課題と法律の改正 化・煩雑化、予算規模の増大が生じていた。また、当然ではあるが、投稿論文も増加し、学会誌編集の作業も煩の幅が広がる新法律公布の情報がもたらされた。2006 年に公布され,2008 年に全面的に施は、他の学会との足並みをそろえ、公益性をもった「法人化」をすることによって、社会の中での看護系学会の存在を知らしめていくねらいがあった。当時、急激な看護系大学の増加、同教員の増加に伴って、看護学の様々な専門領域からの研究が件数的にも大幅な増加を示していたが、同時に、看護系学会も、より専門的な領域への分化の形で増え、大小さまざまな規模の学会が誕生した。しかし、それぞれの学会の関心は各専門領域の学問の確立であり、法人化や社会貢献についての検討はあまりなされていなかったように記憶している。その中で、本学会のような、すでに20年以上の歴史を持ち、全領域の看護学を対象とする、通称「アンブレラ学会」と呼ばれた組織こそが「看護学」を代表して法人化することで看護学会の公益性を示し、社会へのアピールをすることが求められていたように思う。しかし、法人化のための条件として必要な体制整備や課題は、一夕一朝では超えられない難題が多く、検討はこのあとも続けられた。(2)「法人化」が最優先課題とされた学会の事情 看護学の社会的認知に向けた視点からの「法人化」への取り組みについて述べたが、一方で、本学会の個別の事情としても、任意団体としての継続が難しくなっていた。すなわち、現実的な問題として、前述のような看護系大学や大学教員の増加は、そのまま本学会の会員の急激な増加につながり、それに伴う会員管理業務の複雑への対応、総務・会計・編集などの担当理事への報告や人の設立」と「公益性の判断」は「一体」として行われその学会事業が公益性をもったものであることを,主務官庁から認められ,許可されなけれ指示受けも、ほとんどが電話で行われていた。特に、編ていた。すなわち、学会体制の整備はもとより、その学ば,公益法人を名乗ることができない仕組みであった。当時,公益法人の数も相当数あった集については、投稿者のほかにも査読者との連絡調整も会事業が公益性をもったものであることを、主務官庁かことから公益法人の設立は容易ではなく,先⾏して法人化に取り組んでいた他の看護系学担う必要があり、その労力は計り知れないものであっら認められ、許可されなければ、公益法人を名乗ること法人化に伴う「公益性」の価値判断についての意思決定た。当時の職員の方々は、本学会と会員への心底からのができない仕組みであった。当時、公益法人の数も相当会においても許可された学会は見られなかった。本学会も,任意団体としての運営が限界に誠意を持って、臨機応変に学会業務をこなしてくれてい数あったことから公益法人の設立は容易ではなく、先行達し,「法人化」は最優先の目標ではあったが,その達成のためには,他学会との連合や合たが、質的にも量的にもそのご厚意に甘えた形での運営して法人化に取り組んでいた他の看護系学会においても併なども視野に⼊れた「看護学」としての公益性の主張のための方略が必要であった。このが続いていた。また、学会組織が任意団体であったた許可された学会は見られなかった。本学会も、任意団体検討段階において,資産や事務局体制の整備など,物理的に対応が可能な部分もあったが,め、預金等の管理は理事長個人の名義においてなされてとしての運営が限界に達し、「法人化」は最優先の目標いたが、新理事長が就任するたびに、事務局担当者ととではあったが、その達成のためには、他学会との連合や一方では,「公益法人」という組織変⾰が,それまでに学会が大事にしてきた思いや活動をもに、理事長自身が名義変更のために金融機関へ出かけ合併なども視野に入れた「看護学」としての公益性の主妨げるものにはならないのかといった,学会としての立ち位置を改めて問われる決定を迫ることが繰り返されていた。予算規模が年々大きくなる張のための方略が必要であった。この検討段階においられていたように思われる。 につれて、それに伴う管理上の問題も危惧されていた。そのような状況からみても、安定的な学会運営をめざす上では、「法人化」は最優先課題であった。(3)「法人化」に必要な法律上の検討課題と法律の改正 本学会が「法人化」する場合の、選択可能な法人の種本学会が「法人化」する場合の,選択可能な法人の種類は「公益法人」にほぼ限られてい雑を極めた。会員の増加は喜ばしいことであったが、学類は「公益法人」にほぼ限られていた。当時の公益法人た。当時の公益法人制度における「法人化」の条件を満たすための課題としては,「一定額会の体制としては、その管理的立場を担うほとんどの理制度における「法人化」の条件を満たすための課題としの資産」「事務局体制」が主なものではあるが,制度として「法人設立等の主務官庁制・許事が事務局からは遠く離れた大学等の施設に在籍していては、「一定額の資産」「事務局体制」が主なものではあることが多く、日々の雑多な業務や会員からの問い合わるが、制度として「法人設立等の主務官庁制・許可主可主義」とされていたように,「法人の設立」のためには主務官庁の許可が必要であり,ませに対しては、事務局の非常勤職員の方々が対応してく義」とされていたように、「法人の設立」のためには主たその「公益性の判断」についても同主務官庁が判断できるというもので,「法人の設立」れていた。当時は、昨今のようなインターネットはまだ務官庁の許可が必要であり、またその「公益性の判断」と「公益性の判断」は「一体」として⾏われていた。すなわち,学会体制の整備はもとより,普及していない時代であったため、会員や印刷業者などについても同主務官庁が判断できるというもので、「法

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る