日本看護研究学会雑誌発行50周年歴代理事長はじめに喫緊の課題に取り組む方略はスピード感と適材適所第13代 理事長 深井 喜代子 2020年6月からの1期、不束ながら第13代理事長を務めさせていただきました。ポストコロナ時代を迎えた今、当時を振り返りますと、あの2年間は未曾有のコロナパンデミックを必死で駆け抜けた特殊な体験でした。本稿では、その間どのように学会運営に取り組んだかを、会員の皆様とともに振り返ってみたいと存じます。伝統ある学会を引き継ぐ ご承知のように、日本看護研究学会は1970年に設立された本邦初の看護学系学術団体です。学会の目的は定款3章に「広く看護学の研究に携わる者を組織し、看護に関わる教育・研究活動を行い、看護学の進歩発展に寄与するとともに社会に貢献する」と掲げられています。ある学問分野が社会に認知されるには、多くの学者の弛まぬ研鑽によって高度に専門的な理論体系を構築していなければなりません。その社会基盤ともなる日本の看護学教育の四年制大学化は1990年代に入ってようやく本格化しました。諸外国の後塵を拝する形で始まったその動きは堰を切ったかのように急進して看護系大院の設置にも繋がりました。それに呼応するように看護系の学会も次々と誕生し、学会の法人化は既存の学問分野に遅れをとることなく進みました。このように、わが国の看護学が学問として成熟していくなかで、本学会は国を代表する包括的な看護学系学術団体として質実ともに発展(岡山大学 名誉教授)してきたのでした。この伝統と権威ある学会運営をコロナ禍という社会状況下で引き継いで行くには、それ相応の覚悟が必要でした。副理事長を務めていた直前の理事会期から、実は対処すべきいくつかの課題があると感じていました。中でも当方が重視したのは直近数年間の会員数減少問題を扱うこと、そして今一つ見えにくい委員会活動を活性化することでした。以下に、それらの課題にどのように取り組んでいったかを紹介させていただきます。 2010年度の法人化から役員任期は1期2年となりましたが、何か新しい決め事や事業を興そうとすると、2年は非常にタイトです。というのも、例えば定款の改変を伴うような重要案件を成立させるには、少なくとも2回以上の理事会審議を経たのちに年1回しかない社員総会(内容によっては会員総会)に諮らなければならないからです。ですから、役員会は理事長の主導と調整のもとに周到な計画を立て精力的に事を進めていく必要があります。常にスピード感を意識することは必須で、リーダー(委員長)には確実性と先送りにしない事務処理力が求められます。特記すべきは、この課題達成のための30コロナ禍を駆け抜けた学会運営を思う
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