1st1The 50th Anniversary, 実践研究活動推進ワーキングの新設人選に“地方会の人脈活用”が大変有効に機能したことです。かくして適材適所、すなわち学会の置かれた状況を十二分に理解し望ましいリーダーシップを備えた人選が実現しました。学生会員制度の新設学問は成熟するにつれて学術的資産(原理や理論)の増大と細分化が起こり、専門性に特化した中・小規模の学会が誕生します(学会の分化)。看護学分野でも近年、同様の現象が始まり、学会が増える一方で、既存の学会の会員数が減少する傾向がみられるようになりました。本学会でも、2015年度に6200名越えのピークを数,えた会員数は2017年度からは毎年100名余りの目に見えて減少していきました。看護学研究者は増加していると考えられるので、この現実を看過すべきでないと思われました。そこで、この問題に向き合うべく、着任半年後の2020年11月にまずは将来構想検討委員会に“会員数減少問題”を諮ることから始めました。多分野の関連情報を収集して慎重な協議を重ねた結果、会員が学会に所属意義を見いだせること、特に看護学研究の将来を担う若い研究者にとって魅力ある学会を目指すことが重要であることが確認されました。そこで対策の1つとして上がったのが“学生会員制度”の導入でした。そして、2021年4月の理事会に審議事項として提出、メール会議を含め積極的な議論を重ねていきました。こうした経緯を経て、2022年度からついに本学会に学生会員制度が始まりました。若い会員が増え、ポストコロナ時代の看護学研究をリードする研究成果が創生されることを期待します。国際誌 JINR の創刊当該期の特筆すべき事業は何と言っても英文誌発行でしょう。温められてきた懸案ではありましたが、法橋理事の就任を期に、いよいよ実現に向けて具体的な作業に取りかかることになりました。本学会の機関誌である「日本看護研究学会雑誌」は質の高い論文を掲載する看護学系の学術雑誌として長年、定評を得ていましたが、基本的には和文誌であり、多くのエポックメイキングな論文が世界的な評価を得られにくい状況に甘んじてきました。そうしたおり、国際誌の編集経験豊富な法橋委員長から「(伝統ある原著中心の学術誌でも)掲載論文の全編が英文でなければMedline 等の二次資料には収録されない」というショッキングな情報が入りました。これを受け、本学会は和文誌に加えて国際誌(英文誌)も発行すべきであるという発議は満場一致で理事会を通過、国際誌発行に向けての具体的作業が急ピッチで薦められることになりました。委員長の経験とコネクションにより、事務局を業界で定評ある杏林舎に置くことができ、規約とガイドラインが次々と周到に整備されていきました。そして、法橋EIC(Editor in Chief)率いる Editorial Board の初期メンバーは国内外の精鋭の看護学研究者で構成されました。か く し て2022年 2 月、 会 員 待 望 の 国 際 誌 International Journal of Nursing Research(JINR)の Volume Issue発 行 に 漕 ぎ 着 け た の で し た。JINR 発 行 か ら3 年 目、Impact Factor の付与や二次資料への搭載を目指します。JINR が和文誌同様、学会員から世界の看護学研究者の看護学研究の拠り所になることを願ってやみません。 本学会は総合学会でありながら、学会員に看護実践者の割合が比較的大きいことが特徴です。それ故、2010年に法人化する際、看護学系学界におけるアイデンティティの1つとして、実践に資する研究活動とその支援に重きを置くことを主張しました。その特徴を何らかの形で会員に意識していただくべく、2021年度より、将来構想検討委員会の下部組織として新たなワーキングを立ち上げました。ワーキング長は発起人の当方から若村理事、佐藤正美理事へと受け継がれ、題材を選ばない自由で創造的な研究討議が展開される形でスタートしました。全国大会では交流集会を、また年数回の遠隔ミーティングを研究活動に関する相談や研究仲間の発掘チーム作りの場として、参加者全員が和気あいあいとした雰囲気の中、自由な意見交換会である“仲間と研究をつなごう会”を展開してきました。大規模学会でありながら、研究について膝をつき合わせて討論し話し合うサロンのような場を提供します。またユニークな企画として、比較的大所帯の研究室を覗き見る“研究室訪問”も4回実施し、大変好評を得ています。この試みは若手研究者を育む人的・物的環境の在り方を考える機会ともなっています。実践研究推進ワーキングの活動はコロナ禍でスタートしましたが、遠隔だからこそ実現したコンテンツもあります。今後、このワーキングが枠に縛られない自由さを活かしつつ、会員の研究の拠り所として発展・充実していくことを期待します。Japanese Society of Nursing Research 31
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