日本看護研究学会雑誌発行50周年歴代学術集会長第37回学術集会長 黒田 裕子さる2011年8月7日〜8日の2日間にわたって、テーマを“エビデンスに基づいた看護実践を!─現場の研究熱を高めよう─”として、パシフィコ横浜において第37回学術集会を担当した。筆者が経験した苦労は大きく3つあった。最も大きな出来事の1 つは、同じ年の2011年3月に起こった東北大震災の影響から招聘講演の承諾を得ていた Beck 博士の来日が困難となったことである。そのために急遽、Connecticut 大学から遠隔講義を受けることとなった。時差を考慮しながら、招聘講演を無事に聴衆に届けるべく、何度も打ち合わせやリハーサルを重ね、何とか乗り切ることができた。Beck 博士の招聘講演の2本は、“Metasynthesis: A Goldmine for Evidence-Based Practice(メタ統合:エビデンスに基づく実践のための金鉱)”と“Developing a Program of Research that is Knowledge Driven and not Method Limited(方法に限定されるのではなく、知識にもたらされる研究プログラムの立案)”であり、会場は大いに盛り上がり、大盛況であった。コロナ禍を経た現在では遠隔講義は何の抵抗もないと思うが、当時は、本学術集会においては初めての経験であり、パシフィコ横浜の担当者もかつて経験することのない遠隔講演の成功を導いてくださった。裏方のご苦労ははかりしれないものがあったと思う。2番目の苦労は、郵送業社とのトラブルから、学術集会までに参加者の手元に届くはずであった抄録集が届かなかったことである。約500演題の抄録集は、分厚い辞書のごとく重かったことも一因していた。抄録集が届かなかったことを受けて参加者は手元に何も持たずに会場で講演を聞くことになり、たいへんな事態となった。こ(湘南鎌倉医療大学大学院)れを乗り切るために、急遽、会場ごとに切り分けた部分的な抄録を配置し、各会場入り口で手元に配布するというたいへんな作業を担うこととなった。この作業をスタッフ一同で乗り切った。3つ目の苦労は、別の学術集会を筆者が担当していた経験から、学術集会担当業者に業務を全く委託しないで、スタッフだけで手作りの学術集会を行ったことである。そのために一から百まですべてを自分たちで計画・企画し、関連会議を何度も何度も実施し、担当する業務を複数のスタッフで緻密に割り振りして何とか乗り切った。準備期間中は、日々の仕事の大半はこの学術集会関連であった。以上のような苦労経験はあったが、無事に学術集会を迎えることができ、2日間を終えた時には格別な感慨があった。参加者は予想を大きく上回り、黒字会計で終了できたことで、今は良い経験として思い出にふける。40第37回学術集会長を担当して
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