1)北海道大学大学院保健科学研究院2)一宮研伸大学看護学部/名古屋大学名誉教授 (JSNR【背景】 一般社団法人日本看護研究学会(本学会とする)は、広く看護学の研究者を組織し、看護学の教育、研究および進歩発展に寄与することを目的に、四大学研究協議会として1970年に発足した。1993年に本学会が日本学術会議に承認され、特定の専門分野に限定されない看護学全般の領域を包含した学会として、学会誌の発行や学術集会の開催など、看護学術活動の発展に中心的な役割を果たしてきた。 第1回四大学看護学研究会が学術集会として1975年に徳島大学で開催され、2024年度で学術集会は50回目を迎える。そこで、50周年を迎える本学会において、日本看護研究学会雑誌(以下、和文誌)および Journal of International Nursing Research(以下、英文誌)に2000年以降に掲載された研究論文のこれまでの動向を分析し、今後の看護研究活動における課題を検討したいと考えた。【方法】 和文誌は医中誌 Web にて、発行期間を2000年1月〜 2024年3月、論文種類を「会議録を除く」として検索した。英文誌は J-STAGE「Journal of International Nursing Research」にて全件を入手した。和文・英文誌ともに総説や資料などを除外した。対象となった文献を「研究タイトル」「対象」「掲載された年代」「研究デザイン」別に整理した。また、和文誌掲載論文のみを対象に、KH Coder を用いて計量テキスト分析を行い、研究タイトルより研究内容の特徴を明らかにした。【結果】 対象は和文誌894件、英文誌35件だった。論文数は2011年まで増加傾向にあり、それ以降は増減を繰り返していた。英文誌の論文数は、掲載が始まった2022年では5件、翌年の2023年では23件と大きく件数を伸ばし、和文誌の論文と合わせた件数の約4割を占めていた。量的研究が最も多かったが、質的研究の増大が著明だった(図)。 対象は看護職者(313件)が最も多く、患者(211件)、患者の家族(70件)、看護学生(66件)、健康成人(62件)の順だった。KH Coder による共起ネットワーク図より「尺度開発」「障害を有する児の母親」「認知症高齢者の介護」「在宅療養と訪問看護」「看護学生の実習」「がん患者」「患者の QOL」「退院支援」「精神疾患」が主に和文誌に掲載されている主題だった。【結論】 看護教育水準の高等化が進み、研究の実施環境が整備されたことで論文数が増加し、特に質的研究の実施環境も整備されてきたと考える。研究テーマは多岐にわたっており、がんや精神疾患の患者数の増加、法や制度の設立など、国内の情勢を反映した内容が網羅されていた。その一方で、実験研究等は少なく、科学的検証力の強い研究を進めると同時に、倫理的課題を十分に考慮していくことが求められる。The 50th Anniversary矢野 理香1) 宍戸 穂1) 出塚 望1) 安藤 詳子2)50周年記念事業 WG 委員長)Japanese Society of Nursing Research 63日本看護研究学会雑誌およびJournal of International Nursing Research における掲載論文の動向と今後の課題
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