The 50th Anniversary 2012年度学会賞 2014年度学会賞 2017年度学会賞 2019年度学会賞林 智子唐田 順子堀田 涼子今井 多樹子 「“否認”という無意識の患者心理理解における看護師の思考過程の分析─患者心理推測から看護援助へ─」という題目で 2012 年度の学会賞を賜りました。これは2009 年度に聖路加看護大学に提出した博士論文の一部を投稿したものです。「患者の立場に立つ」ことの学術的意義を示したいと思い、「視点取得」という概念を用いて取り組みました。何とか博士の学位取得に至りましたが、研究の遂行では難渋し、研究者として独創的な研究に取り組む難しさを感じていました。そのため、このような賞をいただけたことは自分の研究活動の承認を得られたように感じ、大きな喜びとなりました。 その後は、看護師の患者理解の思考を他者理解の思考へと発展させ、それまで共同研究で行ってきた多職種連携教育の研究に応用しています。医療チームの専門職連携協働を推進するための共感的相互理解モデルの開発などへ研究を進めています。 受賞論文タイトル「産科医療施設(総合病院)の看護職者が『気になる親子』を他機関への情報提供ケースとして確定するプロセス─乳幼児虐待の発生予防を目指して─」 受賞論文は博士研究の一部を論文化したものです。私にとって M-GTA で分析した初めての論文となります。この頃は日々逐語録と戦い、分析に明け暮れた日々を過ごしました。そのようななか、1つ目の論文で学会賞を受けることができ、自身の分析に手ごたえを感じ、少し自信がもてたことを覚えています。その後、博士研究から生まれた4つの論文は、日本看護研究学会雑誌に掲載されました。 受賞論文は JSPS 科研費の助成を受けて行った初めての研究で、その後も研究を継続し、現在4期目の研究を行っています。この研究から産科医療機関の看護職者対象の教育プログラムを作成し、全国規模で研修を実施し、その有用性を検証しました。2023 年3月、これらの研究をまとめた「乳幼児虐待予防のための多機関連携のプロセス研究」(遠見書房)を出版しました。今後も支援の必要な親子に支援が届けられるよう、私には私のできることを成していこうと思います。名古屋学芸大学 看護学部山口県立大学 2017 年度の学会賞を受賞した論文「成人期にある脊髄損傷者の職業人としての自己に対する意味づけ」は、学部・修士・博士課程と連続して取り組んできた、脊髄損傷者の心理的適応に関する研究の集大成であった。採択までに1年間を要し、時に不安や焦燥感に駆られもしたが、査読者からの適切かつ丁寧なご助言を頂き、より良い論文へと推敲を重ねていく時間でもあった。査読者の方々に改めて御礼申し上げる。受賞は、研究者としての自信とともに、脊髄損傷者の方々への看護の質の向上に寄与することに繋がったと確信している。 現在は、看護および介護・福祉系大学における連携教育に関する研究に取り組んでいる。今後も、看護実践や教育の質の向上を目指し、研究成果を発信していくことが研究者・教育者としての責務である。こうした責務を果たしていく場として、日本看護研究学会の存在意義は大きい。益々のご発展を祈念する次第である。 学会賞から5年が経過しました。受賞論文は「質的データにおけるテキストマイニングを併用した混合分析法の有用性」に関するものでした。この研究課題は、テキストマイニングを分析に用いた自身の先行研究において、分析方法としての信憑性が査読者に伝わらず、非常に厳しい査読意見をいただいた経験から着想に至り、挑戦的な試みでもありました。その意味では、受賞論文は自身を含めてテキストマイニングのユーザーにとって、非常に意義深いものといえます。研究者としては、日本看護研究学会雑誌の原著論文として、この受賞論文を含めて何度か採択される中で、奨励賞(2013年度)から6年後に論文賞(2019年度)として認められた経験と感動は、その後の研究活動においてさらなる原動力となりました。研究者として、テキストマイニングにより導き出された言葉や、言葉同士の関連性から得られる知見には信頼を寄せています。学会賞は、テキストマイニングの有用性を示す一つの根拠と考えています。目白大学 看護学部看護学科香川大学Japanese Society of Nursing Research 75
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