日本看護研究学会雑誌発行50周年記念誌
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日本看護研究学会雑誌発行50周年奨励賞受賞 奨励賞受賞の想い出とその後の研究活動 2010年度奨励賞 2011年度・2016年度奨励賞80 2011年度奨励賞 2011年度奨励賞加藤 真由美山﨑 松美布谷(吹田) 麻耶青木  健金沢大学 医薬保健研究域保健学系 私が転倒予防の研究を開始した10年後に奨励賞をいただき、「認知症のある高齢者の施設生活環境における転倒に関する主観的事象の言語化の試み」の研究を実施しました。24時間・計3日間を2施設で参与観察とインタビューを行い、認知症のある高齢者の方々が施設でその時々にどのようなことを思い、考え、どのように過ごされているのかを詳細に知ることができました。中等度の認知症があり、会話がかみ合わない時がありましたが、照度が0Lx の暗闇でもデイルームのテーブルや椅子を上手に避けて歩行し、時間を見計らい行動し、施設内のあらゆる他者を思いやり、自分が家族に迷惑をかけていないか経済的なことまで気にかけるなど、ありのまま生きておられる様に、自分の認知症のある高齢者の方々への理解が変わりました。認知症のある高齢者の方々が自分の思いで精一杯生きることができる支援として、身体拘束回避・解除の研究をさらに邁進していきたいです。 「2型糖尿病患者の運動療法」に関する研究論文で、2011年度および2016年度に奨励賞を受賞させて頂きました。 最初の受賞論文は質的研究でしたが、データ収集の際に研究参加者から「頑張って‼」と応援の言葉を頂いていたことが想い出されます。質的研究は、研究参加者と共に結果を描き出すということを実感した研究でもあり、この経験と感覚は、今の質的研究に対する私の考え方に大きく影響していると感じます。 2回目の受賞論文は、質的研究から発展させた量的研究であり、非常に多くの糖尿病患者と面接させて頂き、結果を導くことができました。改めて、多くの患者様に支えられた受賞であったと感じ、ご協力下さいました皆様に感謝申し上げます。 一方で、糖尿病患者が運動療法を自ら継続し続けるための看護支援には、未だ課題があり、今後も研究し続ける必要性を痛感しております。奨励賞を頂いたことを励みに、今後も研究活動を継続できればと思います。 奨励賞を受賞した研究は、を超えて卒業研究の指導を続けていた中から生まれたものでした。当時同じ大学で共同研究していたご縁から、看護技術の根拠を検証するための実験環境を提供し、卒業研究の指導を協働して行いました。その後、所属が変わってからもその研究体制は継続され、卒業研究での成果をより理論化した形で発表したものが受賞した研究となります。研究指導した成果が論文となったことに加え、受賞もできたということで、共同執筆者である学生も大変喜んでいたことを覚えています。 受賞後も関連研究の論理研究を次の学生に取り組んでもらい、学会発表も続けておりましたが、それぞれの異動等により共同研究体制が続けられず、残念ながら現在は看護学との共同研究は行えてはいません。看護学は学際的な学問であるため、様々な分野とのコラボレーションが可能です。今後も多くの共同研究で看護の基礎研究の発展が得られるよう、期待しております。 貴学会の奨励賞をいただいたのは10数年前となりますが、研究室で受賞の一報をいただいた時のことは鮮明に覚えており、今でも大変嬉しく、光栄に思っております。このような名誉ある賞をいただけたのは、研究指導してくださった先生方、そして何より研究に快くご協力くださり、ご自身の体験を豊かに語ってくださったクローン病者の皆さまのおかげです。受賞論文「クローン病者の食生活体験のプロセス」は、当時、駆け出しの研究者であった私にとって、掲載に至るまでのプロセスで多くの気づきと学びが得られた、最も思い入れのある論文です。また、この研究を出発点として、クローン病者の食生活を支援する看護介入プログラムの開発をはじめ、様々な研究に継続して取り組んでいます。この受賞を励みとして、クローン病者はじめ難病を抱える方々に還元できる看護研究となるよう、より一層の精進を重ねてまいります。武庫川女子大学 看護学部山口大学

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