日本看護研究学会雑誌発行50周年記念誌
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日本看護研究学会雑誌発行50周年奨励賞受賞 奨励賞受賞の想い出とその後の研究活動 2018年度奨励賞 2019年度奨励賞86 2019年度奨励賞 2019年度奨励賞江口  瞳伊山 聡子高橋 方子真鍋 知香 2018年に名誉ある奨励賞の受賞を賜り、誠にありがたく光栄の極みです。対象論文は、終末期がん患者の看護における看護師の倫理的ジレンマ尺度の開発を試みた研究でした。論文が投稿されてから今日まで、全国のたくさんの皆さまから尺度使用についての承諾を依頼されるお電話やメールをいただきました。本論文が、個人的に、組織的に影響力をもたらしていることに感動を覚えると同時に、人々とのつながりを感じています。看護職者としてよりよい看護を提供することは誰もが思うことでありますが、日常的に倫理的問題・ジレンマは避けられないと思います。その時、その場において、何が最善であるかを意思決定し、行動することが臨床看護の神髄であると考えます。 私は、職歴50年の中で、職務の大半を教育の場で過ごしてきましたが、これまでも、これからも、臨床看護の本質を忘れないで、看護教育者として、皆様とともに邁進していきたいと思っています。 コロナ禍のため自宅に届いた賞状。受け取った時の喜びは、家族が撮った写真に満面の笑みとして残っている。研究にご協力いただいた全ての方に改めて感謝し、今後も看護に関わる多くの人に裨益する研究を続けたいと思っていた。しかし、受賞後に研究意欲を完全に19ワクチン接種失う時期があった。そんな時、COVID-業務を通して出会った看護職者の方々と交わす言動が励みとなり、「潜在看護師の復職」をテーマに研究者として再出発することができた。今、思うのは、諦めたはずの研究と、そこに関わる人々に救われたということ。この経験の背景には、研究遂行の大変さよりも面白さ、そして、研究意義の大切さを教えてくれた恩師の存在が大きく、奨励賞受賞もまた前進する原動力になった。今後は、未来の看護を担う人材育成を中心に看護師の生涯学習やキャリア形成の支援を実践していくとともに、看護界にどう自分を活かすのか考え続けていきたい。元 姫路獨協大学 看護学部熊本保健科学大学 私は「訪問看護師を対象としたデルファイ法による日本版バリューズヒストリーの開発」について2019年度の奨励賞をいただきました。今、その当時を振り返ってみますと、受賞のご連絡に驚喜したことや本研究にご指導・ご協力下さいました皆様のことが走馬灯のように思い出されます。この場を借りて皆様に感謝申し上げます。 さて奨励賞をいただいたその後ですが、喜びとともにこの研究だけで「日本版バリューズヒストリー」と提示してよいのかという私なりの疑念が残りました。そのため、現在老人保健施設看護管理者と緩和ケア認定看護師の方々に対象を拡げ同様の追加調査を行い精査・検討中です。 今後はこれらの追加調査結果をもとに日本版バリューズヒストリーについて公開講座を開催し、実際の使用・運用について検討する必要があると考えています。このように自分らしい意思決定に迷う方々の一助となるような研究をさらに続けていきたいと思っております。 看護師にとって「ヒューマンスキル(対人関係能力)」は、看護の専門性の発揮や、多職種と連携するために、すべての看護師に必要な能力であると考えます。看護師が患者や家族の代弁者として、多職種と積極的に意見交換できる能力を培うために、看護スタッフをどのように育成していくのかは、あらゆる施設や部署で課題となっていると思います。そこで、看護師のヒューマンスキルを測定するために「積極的自己開示」「知識的組織理解」「協働的問題解決」の3因子からなる尺度を開発しました。多くの方がこの尺度に関心をもっていただき、使用したいと問い合わせをいただいています。 新型コロナウイルス感染症の拡大のため、学会がオンライン開催となった年に、奨励賞の連絡を受けました。学会に参加できない状況でしたが、受賞したことは今の研究の励みとなっています。そして、本研究が看護職のみなさまのお役に立てることを光栄に思っております。千葉科学大学 看護学部同志社女子大学 看護学部

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