学会案内

日本看護研究学会の歴史や組織などの情報を掲載しております。

理事長あいさつ

一般社団法人 日本看護研究学会 理事長 深井 喜代子 このほど、私儀、本邦で最初に設立された包括的看護学系学会である日本看護研究学会の理事長を拝命致しました。ついては、一言ご挨拶を申し述べさせていただきます。

 世界中が今、新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、過酷な試練を強いられています。感染拡大を食い止めるには、人がこれまでの常識や行動を一変させなければならないという現実は、俄かには受け入れ難く、生きる気力さえ失うほどです。21世紀を生きる私たち人類をそこまでの恐怖に陥れたのは、巨大地震でも隕石でもなく、ナノサイズのウイルスでした。

 コロナ禍襲来前の私たちの日常は…朝起きて身支度を整え、人ごみに揉まれながら職場や学校に行ってはその日のノルマに汗を流す。疲れた足で我が家に戻ると、家族とあれこれ語らいながら夕飯と風呂をすませて寝床に就く。休みの日には友人に会い、家族と行楽地に出かけるなど日常にメリハリもつける。そして、職場や学校、家庭のどこにあっても、この先が上手く運ぶように短期・長期の計画を立てて過ごす、というのが社会的動物である人間の暮らしでした。ところが、突如として現れたウイルスは、無情にも、それを根本的に否定するばかりか、人の絆の形成要素までをも禁じようとするのです。

 人間社会がこうした異常事態にある中、医療者・看護者(もちろん本学会会員の多くが該当者です)は、実践の場で我が身を呈して日々激務に従事しています。地球のどこにも逃げ場がないコロナ禍で、私たちは早急に、それを耐え凌ぐ手立てを考えなくてはなりません。今、世界のあらゆる学問分野の研究者たちは、持てる知恵を最大限に絞り、出し合って、それぞれの領域で、この未曽有のコロナ禍を克服すべく研究活動に着手しています。

 日本看護研究学会の定款3章(目的)には「本法人は、広く看護学の研究に携わる者を組織し、看護に関わる教育・研究活動を行い、看護学の進歩発展に寄与するとともに社会に貢献する」とあります。私たちが専門とする看護学研究(Research in Nursing)は、その黎明期より「人間・健康・環境・看護(ケア)」にかかわる諸現象を対象とし、人が人らしくより健康に豊かに生きるためのヒントや糸口(説や理論)を探究し提案してきました。つまり、看護学は、現に生きて生活している人なくしては成り立たない、人に寄り添う人間科学、実践科学なのです。その観点で言えば、看護学研究においても、明らかなパラダイムシフトが起こってくるはずです。つまり、コロナ禍の前と後では、人々の意識や考え方、そして人間生活そのものが大きく変わっていくことが分かっているからです。実践の場に目を向けると、コロナ禍において、看護者だから見える現象、看護者が取り扱うべき問題や課題が溢れているはずです。私たちには専門家として、そうした問題に立ち向かう使命と責務があります。学会の志に則り、そして看護学の根本理念に立って、今こそ看護独自の視点と方略で、研究活動を鋭意、進めようではありませんか。本学会は、コロナ禍関連研究を広く推進、支援していきたいと考えています。

 以上、伝統ある日本看護研究学会の代表として、また、看護界への恩返しの気持ちで誠心誠意努めさせていただく所存であります。何卒、ご支援、ご指導、ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

 2020年7月 

日本看護研究学会 
理事長      
深井 喜代子